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デュエット
見上げた空に雲。
その中に、あなたに言いそびれた言葉がある気がした。
鳥になった私はそこまで飛んでいくのだけれど、
近づくほどに雲は形を変えて、私は行く先を見失ってしまった。
そんな時、あなたの声が聞こえた気がした。
あなたはいつも私に語りかけてくれていたのに、私は結局何も伝えられなかった。
今すぐあなたに会いたい。
私はもう言葉を話す事はできないけれど、今すぐ会って、あなたの好きな歌を一緒に歌いたい。
見上げた空に雲。
相変わらずあなたへの言葉は見つからないけれど、遠くで聞こえるあなたの声に、私も静かに重ねていた。
もっとあなたを知りたいから一緒に歌を歌いましょう。
歌を歌う。
それだけで良い。
見上げればそこには、雲ひとつない空があった。
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